おもしろコラム9月号
56/182

にはまったく問題なかったにも関わらずです。アフリカやアマゾンの部族でもしばらく肉が手に入らないと、女たちが男たちにハッパをかけたり「肉を持ってこないとセックスはお預け」と脅したりして、男たちを狩りへと追い立てるといいます。そして肉が手に入ったら、たちまち祝宴がはじまったといいますから、やはり肉は特別な食べ物と言えるでしょう。ところが日本の江戸時代では肉をほとんど食べなくなったにもかかわらず、ミートハンガー(肉の飢え)現象はおきませんでした。その理由としては、日本には仏教伝来のときから『聖なる米、穢れた肉』という思想があったと、あまりにも米が美味しすぎたことにあると推測できます。前回も書きましたが、江戸時代の日本人は1日5合の米を食べていました。それだけで一日に必要なたんぱく質をほとんど摂取することができました。そして日本のお米は、例え肉がなくても満足できるくらいに美味しすぎた。米だけでたんぱく質をほぼ摂取できるのですから、ある意味、米さえお腹いっぱい食べられたら、それほど肉への欲求は起きなかったのでしょう。ただし玄米は完全食ですが、白米となるとその栄養分をかなり削りとられ、さらにビタミンB群もとってしまうので、白米の過食は脚気(ビタミンB1欠乏症)になりやすいという欠点があります。日露戦争の兵隊さんたちは「兵隊に入ったら、白いお米を腹一杯食べられる」というので集めたため、白米ばかりを食べ続け、多くの人が脚気にかかり、日露戦争の日本系戦死者・病死者約75%もいたというから、逆にいえば、どれほど日本人がお米を求めたのかがわかります。          55

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る