おもしろコラム9月号
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日本人は牧畜の習慣がなく、また牛乳の飲む習慣もありませんでした。飛鳥平安時代にはヨーグルトやチーズのようなものを作ったりしており、また江戸時代では将軍吉宗が牛乳を飲んだという記録はありますが、基本的に当時の日本人は牛乳を飲んだり乳製品を作ったりすることはありませんでした。江戸時代の商人で、大黒屋光太夫という人物がいました。船でロシアに漂流し、ロシア人に助けられ、なんとユーラシア大陸を横断し、サンクトペテルブルクで女帝エカテリーナ2世と謁見した後に日本に帰国したという数奇な人生を歩んだ人ですが、助けられたとき、初めて牛乳を飲みます。何も知らずに飲んだときは美味しいと感じたらしいのですが、その後その白い飲み物が、牛の乳と知ったあとはとても気持ち悪くなり、飲む気にならなくなったといいます。肉食も牛乳を飲むことも、日本で本格的に定着したのは、太平洋戦争が終わってからと言っていいでしょう。        (食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ)絵:吉田たつちか)201709/-    ●日本人は牛乳も飲まなかった56

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