おもしろコラム9月号
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と呼ばれて珍重されました。次に江戸時代の居酒屋について書きましょう。まず居酒屋が現れたのは江戸時代になってから。戦国時代以前にもそれらしきものはありましたが、居酒屋と言えるものは江戸時代の中期から。それも1657年の『明暦の大火の天主を焼いてしまうほどの大火事だったのです。江戸幕府はそれ以降、天主を作りませんでした。幕府はそれよりも江戸の復興に力を注いだのです。火事の復興ですから、多くの大工など職人が江戸に流れてきました。そんな男たちの楽しみは、仕事が終わってキュッと一杯やることでした。それまでのお酒は、酒屋で買って家に持って帰って飲むというもので、独り者にはちょっと寂しいものでした。さらに客の中には家まで待てないなんて人も出てくる。そんな人は酒屋に「居たまま」飲んじゃう。ちなみに江戸っ子のお酒の飲み方は、夏でも冬でも基本熱燗です。すると同じように酒屋に「居たまま飲む」人が増えて来て、交流がうまれ友だちができる。また仕事帰りの空きっ腹です。ちょっとしたツマミなんかも欲しい。酒屋さんも、簡単な料理を出すようになる。これまで酒屋で酒を買って帰り、1人で飲んでいたのが、みんなとワイワイ楽しんで飲むスタイルに変化して『居酒屋』が誕生したのでした。テレビや映画で描かれる江戸時代の居酒屋は、テーブルがあり、樽などに座って飲み食いするスタイルが多いのですが、テーブルが現れるのは明治時代になってから。座敷に座るか床几(腰かけ台)に座り、横にお酒と料理を置いて、飲んだり食べたりしていました。座敷にちゃぶ台があるというのも嘘で、日本にちゃぶ台が普及するのは明治になってから。では江戸時代の居酒屋では、どんな料理が出ていたのか。人気だったのは「芋の煮転がし」や「田楽」、この田楽は豆腐・コンニャク・大根などを串に刺して味噌をつけて焼振り袖火事』の後からです。明暦の大火は江戸城   ()  73

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