おもしろコラム11月号
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のでしょう。そう考えれば、我々、現代の日本人は何とも良い時代に生きているものだと、改めて再認識せずにはおれませんでした。いくら、治安が悪くなったと言っても、父も子も、兄も弟も、片っ端から戦場に送られるわけでもないし、生活が楽ではないと言っても、子供を借金の形に奴隷に取られることが「当たり前」でもないわけですから・・・って、そこまで考えて、ふと、とんでもないことに気付きました。これって、よく考えてみれば、何も古代中国のことなんかじゃなく、戦前までの日本人の姿そのものじゃないですか。庶民の命なんか虫けらとも思わず、十把一絡げで1銭5厘の召集令状一枚で片っ端から徴兵して、絶望的な戦場    11月号-156  に送り込む。働き手を失った上に、国家予算の大半を軍事費に奪われ、凶作になれば、娘を売らなければならなかった大日本帝国の農民の姿そのもの。人間とは、何と、まあ業の深いものかと・・・。(ちなみに、当時、召集令状は切手代が1銭5厘だったことから、庶民は「1銭5厘の命」などと自嘲しましたが、葉書が1銭5厘だったのは昭和11年まで。つまり、太平洋戦争が始まったときには2銭に値上がりしていたわけですね。)     (小説家 -   池田平太郎)201811

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