おもしろコラム11月号
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もこういう困ったお得意様はいるものです。)しかも、当然、こういう身分の人であれば、単身での来店のはずもなく、従者の皆々様もいるわけで。彼らとしても、本音では食べたくないが、殿様だけ食べさせて、自分たちはいらないとは言えないから、下手をすれば、御一行様全滅などということにもなりかねず。もし、そんなことになったら、いくら、「毒があるからダメと言った」と主張しても、遺族の中には、必ず、「それを御止めするのが、まことの忠義というものであろう!」などと言う人が出てくるんですよ。「であ、れこはの毒店のは恐どれうがしあたりかま?す大れ名ばに」だとけ断はわ本る物がの、フ「グ毒をか出、しお、も従し者ろにいは」同とじ言味っ付てけ聞でくコ耳チをと持いたうず無。(毒・の・魚・をい出つしのた時と代。    11月号-158  なるほど、これで店としても、大名の機嫌を損ねることなく、内心では食べたくないお供の者らへの気配り・・・と思いきや、万一、毒に当たった時に、「フグを出せと言われましたが、実は手前どもの一存で、お出ししたのは無毒のコチでござりました。その証拠に、従者の方々は誰も毒に当たっておらぬではないですか」と言い逃れするための責任回避策だったと。なるほど、商売人の知恵ですね。でも、そう考えれば、隣で同じ皿の物を食べている人が、果たして、本当に同じ/         (小説家 物を食べているのかはわからないということですね。あるいは、似ているだけで、まったく違う物を食べているのかも。池田平太郎絵:吉田たつちか)

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