おもしろコラム11月号
35/200

絵:吉田たつちか)喰い」とも称されました。他の獣肉にも隠語を用い、馬肉は「さくら」、鹿肉は「もみじ」などと呼び、またうさぎ    11月号-34  を1羽、2羽と鳥類と同様に数えるのも、鳥とみなして食べるための隠語に由来するといわれています。また亥は中国の陰陽五行説によると水性の干支となり、火難を逃れるという信仰があったことから、亥の月の亥の日に炬燵(こたつ)や囲炉裏(いろり)を開くと火災にならないと信じられていました。現在も茶道界では亥の月の亥の日に畳にきった炉を開き火を入れる「炉開き(ろびらき)」という行事が行われ、別名茶人の正月ともいわれる大変重要な年中行事の一つです。菓子は「亥の子餅(いのこもち)」という名の、餡を餅で包んだ菓子が付き物です。長い冬に備えて滋養のある肉を食べて英気を養い、火の安全を水の干支である亥に祈念して暖の準備をする。亥の/   月にはそんな先人の知恵が込められた暖かさが溢れているのです。      (文:現庵

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る