おもしろコラム11月号
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と、看板をかかげて商売ができたとは思えず、おそらく世に潜まざるを得なかったのではないでしょうか?  当時の中国では「旧世界を破壊せよ!」「新世界を建設せよ!」というスローガンの下、数多くの伝統的な物事やそれを伝える人々が大粛清されたときでもありました。事実、文化大革命のとき、中国の伝統料理店のほとんどが「美食はブルジョア的である」ということで破壊されてしまいました。さらに中国では個人経営の料理店が出せるようになったのは、1984年からなのです。現代に伝わっている北京宮廷料理というのは、後に宮廷料理を資料などから再生させているものと思われるのです。ただし、現代北京料理の歴史がたったの60年程度であったとしても、北京料理の価値が落ちるという意味ではありませんので念のため。そもそも現代の世界各国の代表的な料理のほとんどは、過去からの民族料理を原典としつつ、ここ100年くらいの間につくられたものですしね。(     食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ) /-   絵:そねたあゆみ)20131111月号-59

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