おもしろコラム11月号
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ちゃぶ台でしょうか?実は日本では食事をするときテーブルはもちろん、ちゃぶ台でもありませんでした。一人ひとりがそれぞれのお膳を使って食事をしていたのです。一人ひとりが個人用のお膳で食事をするという日本独特の伝統食文化は、いまでは旅館くらいでしか見られません。この伝統食文化を一気に吹き飛ばしたのが、関東大震災でした。ちゃぶ台のちゃぶとは漢字で書くと「卓袱」、別の読み方をすると「しっぽく」です。「卓袱料理」とは長崎の中国料理のこと。明治時代になり、横浜などで外国人相手に食事を出したりする宿を「ちゃぶ屋」といいました。町にも西洋料理や中国料理のお店が出るようになります。その店のテーブルが「ちゃぶ台」と呼ばれるようになります。それまで日本の料亭や居酒屋、茶屋にもテーブルで食べるなんてことはありませんでした。だから時代劇の居酒屋なんかで、テーブルを囲んで酒を飲んでいるってのは間違いってことになりますね。その「ちゃぶ台」も、関東大震災までは家庭に入っては来ませんでしたが。震災という大破壊の後一気に広まったと言われています。まあ、家族で食事をしているとき、お醤油ひとつ取るのも、片づけるのも一人ひとつのお膳よりちゃぶ台の方が楽ですものね。という具合に、関東大震災は、食文化にも大きな影響を与えたのでした。時代が激動するときは食文化も激動する-             (食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))202011のです。    11月号-76  

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