おもしろコラム11月号
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【1936年生れの山下惣一(佐賀県、農業・作家)農学博士である野本京子氏の「農村の「食」の変容からみた近代史―農村調査資料に聴く」にはこんな聞き書きが載っています。は以下のように述べている。コメの飯は盆、正月と祭りのときだけ。わが家では昭和 38 年までコメの飯はハレ日の食事に限られていました。「白いごはんを腹いっぱい食べたい」というのは私たちの世代の農村の子どもにとって夢だったのです。】昭和38年というと1963年、つい最近のことです。農村でも商家でも客でも来ない限りおかずは基本なかったようで、あってもせいぜい漬物程度、たまに豆腐や魚が出れば贅沢というものでした。家庭料理とプロの料理が融合してくるのは、日本で言うと高度成長期の60年代くらいからです。テレビが普及し、料理番組が盛んに放送されるようになり、外食が少しずつ増えてきました。コロッケなどを肉屋で作るようになったのは昭和初期ですが、それも贅沢品でした。高度成長期になると、電気やガス、水道をそなえた台所が一般化し、炊飯器やトースターも普及しました。カレールーが発売されたり、ト11月号-83ンカツ、ハンバーグ、ホットケーキなどお店でないと食べられないものが、家庭でも作れるようになってきたのです。     

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