おもしろコラム11月号
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なかなかこない。半日ほどたってやっと来た。美味しかったのですが、値段を聞いて驚いた。なんと茶漬け一杯と香の物の値段が1両2分。いまの金額なら6万円くらいでしょうか。いくら高級料亭でもさすがに高いと、その理由を聞くと「香の物は春には珍しい瓜と茄子を切り混ぜにしたもので、茶は玉露、米は越後の一粒選り、玉露に合わせる水はこの辺りのものはよくないので、早飛脚を仕立てて玉川上水の水を汲みに行かせた。香の物は大した値段じゃないが、飛脚の代金が高くつきました」というお話。明治・大正時代になると、洋食が入って来るなど外食にも多様化の波がやってきます。外食産業という言葉が使われるようになるのは1970年代から。この時代にファミリーレストラン・チェーンや、ファーストフードのチェーンが出て来て、家族や友だちとより気楽に外食ができるようになりました。外食は「家庭や自分で作らずにプロに作ってもらって、お金を払って食べる」ものです。それはいまも昔も贅沢なもの。しかし文化・文明が進むと、どんどん手軽にどんどん身近になってきました。外食で高級料理を楽しむもよし、ファミリー価格のものを気楽に楽しむもよし、たまにはそれぞれの贅沢をしてみ-               (文:巨椋修(おぐらおさむ) 食文化研究家)202311るのもいいですね。11月号-87

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