・文:ジャーナリスト 井上勝彦
・絵:吉田たつちか
・発行:2021年8月
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IoT(Internet of Things )がこれからのトレンドだという。従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(住宅・建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みだ。すなわち、モノのインターネットという意味で使われている。
先日読んでいた雑誌に、IoT化されたスマートゴミ箱“SmaGO”が表参道・原宿エリアに13箇所34台設置され、街の美化に役立っているという。このゴミ箱には広告が付けられるのがミソ。ゴミ箱自体を広告媒体として活用し、パートナー企業の協賛を得ることで、設置・運用コストの大幅な削減を可能にしているという。
このゴミ箱のどこがIoTかという①ソーラーパネルで発電・蓄電し、必要な電力を自分で獲得する②ゴミが溜まると電動で自動圧縮するので、ゴミが入る容量が通常の5~6倍可能③ゴミ箱がいっぱいになると通信で保守管理会社に伝えられ、回収に無駄がなく、コスト削減にもつながるという。
そういえば、公園にゴミ箱が無くなって久しい。管理する地方公共団体が予算削減のために撤去したと聞く。家庭ごみを投げ入れる人が多く、管理費用がかさむというのが理由のようだが、納得できない。小生らが毎朝体操会場として使っている公園にもゴミ箱はない。その結果、時々、ベンチ周りなどに、コンビニで買ったお菓子類などのゴミが捨てられている。ひどい時にはレジ袋にいっぱい詰め込んだゴミが公園横の川縁に放り投げられていることもある。ゴミ箱の無い公園は公害の元凶なのだ。
10数年前、台北で地元の友人と飲んだ帰り、彼は平気でゴミを道に捨ててしまう。見れば、マクドナルドなどの袋が風に舞っている。彼曰く、明日の朝になれば、道路や歩道はすっかりきれいになっているから大丈夫だという。早朝、リヤカーに掃除道具を積んだ、老人がせっせと掃除している。自分の持ち場(エリア)が決まっていて、この掃除をやることで役所から幾ばくかの賃金が支払われるのだという。いわば、老人とて、自分の食い扶持くらいは、毎朝働いて稼いでいるのである。田舎であれば、家庭菜園などで、食い扶持を得られるが、都会ではそうはいかない。生活保護費を供与するだけで働かせない日本と大きな違いだ。どちらの老人が幸せかは言うまでもない。公園のゴミ箱を撤去するのではなく、ゴミ箱掃除という仕事を作る方が理にかなっている。
アメリカ・サンディエゴに娘一家が住んでいたころ、近所の公園を散歩していたら、黒い小さなプラスチック袋が入ったポールが気になった。聞くと、犬のフンを入れるための袋で、散歩中の犬が糞をしたらこの袋に入れて最寄りの公園のゴミ箱に入れればOKとのこと。公園のゴミ箱といっても、コンクリートで出来た大きなもので、公園でバーバキューをした後の灰もいれられる専用のゴミ箱も設置されていた。
ゴミ箱を撤去するのでなく、ゴミ箱を活かすことに知恵を絞るのがよろしい。その意味でスマートゴミ箱“SmaGO”が日本でも普及するのを期待している。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2021-08