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未来の肉食はどうなるか?

・文:食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ)
・/絵:吉田たつちか
・発行:2020年09月

*挿絵入りコラムの単品販売です。


●やがて肉食はなくなるのか?

 私たち人類が他の動物にない大きな脳を獲得したのは、肉食をしていたからだといいます。脳の重さは体重の2%程度ですが、その消費カロリーは人体の20~25%も占めています。
 いまでこそベジタリアンやヴィーガンといった肉を食べない人がたくさんいますが、進化の過程で人類が知能を発達させるためには、植物だけではなく、動物性たんぱく質を摂取する必要があったのです。
 しかしここにきてこの人類の肉食が、人類の生存を脅かしつつあるのです。

●肉食が地球を滅ぼそうとしている

 1800年、世界人口は約10億人、1900年は約16億人2000年は約60億人、そして現在2020年になると約77億人とあまりにも急激に人口が増え続けているのです。
 ここ20年だけでも20億人も増えているのです。現在いる77億人の胃袋を満たすのは農業・漁業・畜産業。これらが地球環境を悪化していると言われています。その中でも問題視されているのが畜産業。
 現在、地球温暖化が国際的な大問題となっています。さてここで問題です。畜産と自動車や飛行機等の排気ガスとどちらが温室効果ガスを大量に出しているのでしょう?
 答えは畜産。家畜たちが世界の全交通機関から産出される温室効果ガスよりも 40%も多くの温室効果ガスを出しているのです。
 また、我々が生きていくために絶対に必要なのは水ですが、畜産は穀物生産の20倍もの水が必要で。さらに放牧等で土壌を荒し、地下水源悪影響を与えており、国連は今後の人類のために水を確保するためには肉の消費を減らさなくてはならないと警告しているほどです。

●飢餓と肉食

 現在、地球には8億人以上の人が飢餓状態にあります。しかし世界中でとれる穀物の約40%が家畜の飼料として使われており、牛肉1キロを作るのに13キロの穀物が必要です。豚肉1キロだと7キロ、鶏肉1キロだと4キロ、卵1キ
 つまりもし世界中の人々が肉食をやめ、ベジタリアンになるとたちまち世界中から飢えで苦しむ人を救うことができるのです。でも、そんなこと、なかなか難しいですよね。

●未来の肉は人造肉か?
 人類というのはもともと肉が大好きな生き物です。ポーランドはかつて社会主義国家でした。1980年、ポーランド政府は配給の肉を20%カットしたとき何が起こったかというと、まず主婦たちが怒り「肉をよこせ」と叫びやがてそれは全国的なストライキに発展、やがてポーランドの社会主義は崩壊してしまいました。
 このときポーランド人が飢えていたのかというとそうではなく、十分な栄養を摂取していたのです。人類の肉食への想いおそるべし!
 江戸時代以前の日本でも、まったく肉を食べていなかったわけではなく、魚肉や野鳥、ニワトリは普通に食べていましたし、イノシシを「山くじら」、シカを「ぼたん」と称して食べていました。
 また、日本人も肉の想いが強かったらしく、鳥の雁(がん)の肉を真似て「ガンモドキ」などを食べていました。
「ガンモドキ」代表されるもどき料理は言ってみれば「人造肉」ですが、現在のベジタリアンやヴィーガンも好んで食べているようです。
 人造肉は人工肉とも言われていますが、大豆など豆類やジャガイモなどのたんぱく質から作ったもの。さらに近年では「培養肉」といって、ウシやブタの肉から細胞を取り出し、動物の体外で増やして作る肉の研究が進んでいます。
 これだと広大な放牧地は必要なく、また動物を殺すこともない。すでに多くの企業がビックビジネスとして参入しているといいます。
「人造肉」「人口肉」「培養肉」というと、違和感を持つ人も多いかも知れませんが、2050年には地球人口は100億人ほどになるそうな。地球を救うためにも、人類を救うためにも必要なことだと言われています。
 そのとき、また新しい食の文化が誕生することでしょう。

(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2020-09

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