・文:コラムニスト ふじかわ陽子
・/絵:吉田たつちか
・発行:2021年2月
*挿絵入りコラムの単品販売です。
*画像をクリックしてショップでお買い上げください。
*ダウンロード販売です。
昨今、家族の結びつきが弱まってきているといいます。それは民話、現代では「都市伝説」と呼ばれているものからも感じられます。ひと昔前では「口裂け女」や「人面犬」が主に小学生に怖がられていたのをご存知でしょう。これらは口伝えで広まっていった都市伝説だといわれています。
祖父母と暮らしているのが当たり前の時代では、寝物語に祖父や祖母が孫にお話を伝えることも多かったでしょう。その前は囲炉裏端でのお話でしょうか。
一方現代は、インターネットが中心です。インターネットだと口伝えと違い、信頼できる相手からの情報ではありません。ですから、都市伝説が発生したとしても真贋不明として、すぐ消えてしまう運命。これが口伝えでしたら、話してくれる人は信頼している相手ですから、どれだけ荒唐無稽な話であっても信用してしまいます。
都市伝説、つまり民話は人との結びつきを強めるためにとても良い役割をしていました。常識的な話でなく荒唐無稽な話を「共有できる」ということが、仲間の証なのです。
神話も同じで、国の成り立ちを国民全員で共有することが重要です。日本の場合はイザナギノミコトとイザナミノミコトが、混とんとした世界を棒でかき混ぜたことから神話は始まります。現代の感覚だと有り得ない話です。
『因幡の白兎』など他の日本の神話も、現代の感覚だとあり得ません。それでも有り得ない話を受け入れ、周囲に伝えることで結びつきを強めてきました。そして、現代では思いつかないような有り得ないことがあったからこそ、国というものが生まれたと感覚的に受け入れます。
加えて、神話は自分のルーツを知ることにもつながります。混とんとした世界を治めてくれた人がいるからこそ、自分がここにいることができると。歴史を知ることも、これにつながります。
ですから、神話も民話もただ知るだけではいけません。誰かから聞いたら、今度は自分が信頼する相手に伝える。この繰り返しが人々の結びつきを強めてきました。インターネット時代の昨今だからこそ、大切な人に自分が聞いた話をしてみませんか。数字だけでははかれない結びつきが強まりますよ。
(コラムニスト ふじかわ陽子)2021-02